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園長日誌

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
新年早々、大地震に飛行機事故、電車内で刃物を振り回す事件など、痛ましい災害、事故、事件が続き、今年は一体どんな一年になるのか不安な幕開けとなりました。
「終わり良ければ総て良し」の格言のように、最後は良い年だったと言えるよう前向きにいきたいと思います。

さて、昨年はコロナもひと段落、園の行事もコロナ前に戻りつつ、コロナ禍、改めて保育のあり方について精査したことで、子どもたちの発育発達において優先すべきもの、効率よくできるもの、逆に時間がかかっても丁寧にすべきものなどを取り組み始めた一年だったように感じます。
その中で、私自身物足りなさを感じていたのは、「ワクワク感」です。
保育の専門的な知識や技量も大切ですが、子どもも大人も楽しいと思えるものがこのコロナ禍で失われたように思います。
昨年11月、4年ぶりに作品展で食品販売をしました。子どもも大人も楽しそうに過ごす姿に、もっとワクワクすること、子どもたちの記憶に残る「楽しい思い出」を作りたいと思い、今年の6月22日(土)に今までにないイベントを行うことにしました。

仮称ですが「報恩感謝祭(ほうおんかんしゃさい)」(略しておんフェス)です。
内容はこれから詰めていきますが、例えば、今まで子どもたちだけでお参りしていた報恩講を保護者も一緒に、お稚児さまの衣装も着用してお練りも行う。また、作品の展示だけでなく、参加型(ワークショップ)にした子育てフェスを楽しむ。職員だけでなく保護者や地域の皆さまから参加を募り、フリーマーケットやキッチンカー、食品販売を行う。大道芸や演奏会など観て聴いて楽しむなど、園舎前の通りをホコ天にして地域を巻き込んだイベントができればと検討しています。

どこまでできるかわかりませんが、親も子も先生も地域の方々も楽しめる、「ワクワク」するようなイベントにしたいと思います。
2月のお遊戯会で改めてお話しします。保護者の皆さまにもご協力をお願いします。

2023/12/07  好む絵本を

先日、ベネッセの「子どもの生活と学びに関する親子調査」についての分析記事を読みました。約2万組の親子を対象に2015年から7年間追跡調査した結果ですから、かなり大がかりな調査です。
その中で「子どもの読書行動の実態」についての報告がありました。

家庭の蔵書数が30冊未満と100冊以上を比較すると、小学生、中学生において読書量が約2倍の差、高校生でも1.5倍差があるそうです。
他にも「本を読む大切さ」を保護者が伝えている場合と伝えていない場合では、小学校低学年で約2倍、高学年でも1.7倍差が現れるそうです。
幼少期の読み聞かせについても顕著に現れます。就学前に週4日以上保護者が読み聞かせする場合と、週1日未満の子どもでは、就学後1.5~2倍の読書量の差が続きます。

なぜ読書や読み聞かせが必要なのでしょうか。
乳幼児期においては、親子のコミュニケーション(愛着形成)、語彙力、知識、道徳、想像力、興味、関心、好奇心を育むことができます。

江戸時代の儒学者、貝原益軒はその著書の中で次のようなことを説いています。
「子どもは小さいときから早く良い人に近づけ、良い道を教えるべきである」
教育がないと、人は欲望のままに振る舞ってしまうので、子どもを育てる上でがまんを教え、わがままを押さえて人の道を教えていくことが重要だというのです。
一方、その子どもに対しての教え方は「子どもが好むことを楽しめるようにする(楽しめる環境を作る)ことが大事である」とも述べています。

良い人も良い道も親が探したり教えることは難しいですが、絵本を開くと良い人も良い道も見つけることができます。
本屋さんや図書館には子どもが興味を持った本が必ずあります。子どもが好む本を週1回でもいいので読み聞かせてみませんか。
ちなみに当園では、絵本や紙芝居などを毎日読み聞かせをしています。

2023/11/01  園選び

報恩講、秋の遠足、公開保育、初参式、園内研修、親子ミニ運動会、誕生会と大きな行事はなかったのですが、小さな行事や活動が目白押しで、10月が慌ただしく終わりました。個人的には全国園長研修大会や教育実践研究会への参加もあり、少し頭の中の交通整理が必要です。

印象的だったお話を一つ紹介します。
先日、文部科学省初等中等教育局幼児教育課長の藤岡謙一氏より「幼児教育の現状と課題」について講演がありました。
ミニ運動会のあいさつでも少し触れましたが、日本社会の課題として
1.AIなどにより大きく変化する社会への対応
2.貧困の連鎖
が挙げられていました。
この課題を克服するためには教育が重要です。
変化の激しい社会に対応するためには、今よりさらに高い資質・能力を身に着けられるよう、教育の充実が求められているというわけです。
しかも教育は積み重ねであるため、幼児教育から高校教育へと各校種において充実を図る必要があります。
また、ペリー就学前教育プロジェクトでも実証されているように、質の高い幼児教育が貧困層の子どもへの支援につながることは周知の事実です。
将来大人になったとき社会で活躍できるように、貧困の連鎖を断ち切り将来安定した生活を送れるようにするためには、教育全体の中で特に幼児教育からの充実が求められているわけです。

ところが2022年日本総研のアンケート結果によりますと保護者は園選びで教育内容を重視していないことが分かりました。
園へのアクセスや施設の雰囲気、保育者への信頼度が上位を占め、幼児教育の取り組み内容に関しては二の次となっています。
もちろん、たまたまアクセスの良い園が質の高い幼児教育を実践していれば、それに越したことはないのですが、残念ながらそうとも限らない場合が現実にあるわけです。
わが子に合う合わないはあるでしょうが、私としては自信をもって幼児教育を提供しておりますので、是非、その教育内容で園選びをしていただきたいと思います。

子ども家庭庁が発足して半年が経過しました。
様々な子育て支援策を提示していますが、心配事がいくつかあります。
今回はその代表的な2つを園目線で見ていきたいと思います。

まず、一つ目は育児短時間勤務の減収分の補助です。(図④)
幼稚園、保育園、認定こども園では、女性が圧倒的に多い職場であり、当園でも今年度は4名の保育者が育児休暇を取得しており、今日現在も3名が取得中です。
そのため、代替職員を採用し、職員配置の基準を満たすべく対応しているわけですが、ご承知の通り昨今の人手不足のため、大変苦労しながら保育者を集めています。
今後、育児短時間勤務の減収分を補助することになった場合、考えうるのはさらなる人手不足です。働かなくてもお金がもらえるのであれば、働く人はいませんよね。
園の運営は保護者負担金と給付費(わかりやすく言えば運営費の補助金)で支えられているわけですが、適切な面積と職員配置、加算条件をクリアしていないと減額されたり、そもそもいただけなかったりします。
ですから、特に適切な職員配置に気を付けながら運営しているのですが、人手がなければ園児数を減らしたり、保育時間を短くしたり、保育サービスを取りやめたりしなければなりません。
そもそも短時間勤務の減収分を補助するための原資はどこからくるのでしょうか。現在検討されている原資は、雇用保険です。雇用保険料を引き上げて補助するわけですから、手取りは減ってしまいます。
個人的には無理に短時間にするのではなく、定時退勤をまず目指してほしいと思います。父親も母親も定時で退勤できれば、ワンオペ育児も解消されます。親子のスキンシップも十分にとれます。

二つ目はこども誰でも通園制度です。(図⑤)
実は現在、一時預かり保育事業という事業が存在しています。当園でも実施しており、一日最大8時間、週3日まで利用できます。(特例を除く)
この現事業との違いもあいまいで、わざわざ新制度を作る必要があるのか、また新しい制度では、あくまでも子どものみの利用であって、親子登園などは認めていないことなど、疑問が残ります。また当然ことですが新たに職員配置が必要となりますから、人手不足が悪化します。
そもそも預ける必要性が低いご家庭の利用ですから、一時預かりで十分だと思いますし、保護者の子育て力を高めるためには、親子登園の方が意味があるように思われます。

大事なことはしっかり議論を重ねることです。
特に何よりも考えてほしいことは、どんなにお金を配っても少子化は止まらいということです。
子ども家庭庁には、一回仕切り直して、子育ての楽しさ、家族で支えあうことの喜びをしっかり伝えることから始めてほしいと切に願います。

昨今は医学の発展や研究の成果により、今まで見過ごされていた軽度の発達障害の子どもたちの早期発見が可能となり、幼児期から療育支援を受けることで以前と比較すると発育発達に大きく寄与することができるようになりました。
しかしながら、知的障害に関して特に境界知能(日本人の約14%)と呼ばれるIQ70~85の幼児は、発育発達が少し遅れている程度、つまり他の幼児と比較しても性格によるものではないかという程度が多く、保護者が気になって知能検査を受けさせることがない限り、発見は難しいということが現状です。
過去にも就学前になって検査を受けたところ、境界知能であることが分かり、小学校では支援を受けることになったという事例がありました。

平均的知能は100(85~115)

保育現場では疑わしい子どもがいても、あらゆる方向から複数のベテラン先生が子どもを観察し、記録してその上で保護者に伝えるか判断をします。念には念を入れて十分に議論を重ねてからです。そのため、保護者に伝える時期が遅くなってしまいます。
それでも保護者が納得しなければ専門医に繋げることはできません。

保育者は子どもの「代弁者」であり「理解者」でもあります。
ですから子どもたちがこれからの人生において「生きづらさ」を感じることがないように、また生きる力(知識及び技能、思考力、判断力、表現力等、学びに向かう力、人間性等)の基礎を育むために取り組んでいます。
子どもの発育発達について疑問や違和感を感じたときはいつでも園に相談してほしいですし、園からお話があった際は子どものために一緒に受け止めてほしいのです。

対応が早ければ早いほどその後の人生で生きづらさは減りますし、境界知能の場合、中学3年生程度の学力が習得可能なので、一つ一つステップを踏んでいけば十分に生きる力は身につきます。認知機能が支援によって上がる子どももいます。
大切なことは否定的にとらえるのではなく、どうしたら理解できるようになるか、どのように実行できるようになるか、一緒に考え寄り添うことです。

問題を抱えている子もいない子も、親として子どもたちが幸せな人生を送るために何をしたらよいか、親自身も子育てを楽しむにはどうしたらよいか、ときには家族で考えてみるのもよいかもしれません。

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