新年度が始まり1か月経ちました。
毎年のことですが、1年で一番慌ただしい1か月であり、あっという間に過ぎてしまいました。息つく暇もないという表現がぴったりです。
さて、私は隣接する浄土真宗寺院の住職をしております。自分では本職は僧侶だと思っているのですが、1週間の8割近くは園長として仕事しているので、傍から見れば僧侶はおまけに見られるかもしれません。
ですので今回は少し仏教のお話をします。
私の宗派の開祖は親鸞聖人です。鎌倉時代になんと90歳まで活躍されました。当時の日本人の平均寿命は30才にも届かなったそうですから大変な長生きでした。歴史に名を遺す偉人はやはり、超人的な生命力があるのかもしれません。
その親鸞聖人が90歳の時に書かれた書物の中に「自然法爾(じねんほうに)」という言葉が出てきます。
わかりやすく意訳すると「あるがまま なすがまま」という意味です。
仏教ではこの社会は原因・縁起・結果(因縁果)の組み合わせで成り立っていると考えます。
例えば、交差点で交通事故があったとします。原因は一方の信号無視、結果として2台の車が衝突して運転手双方が怪我をしました。交通ルールを守れば起きない事故ですが、事故にならないという視点から見ると、場所・時間がずれていれば事故は起きなかったとも言えます。たまたまその交差点をその時間に通過したために事故にあったわけです。これが縁起(ご縁)ということになります。
つまり、逃れようのない力が我々には働いているということです。それを運などと表現することもあるでしょう。
親鸞聖人はこの逃れようのない力をあるがまま、なすがままに受け止めよ、と申されています。そのおこころは、前向きに(ポジティブに)受け止めよと味わうことができ、心豊かな人生になることを伝えてくれているのではないでしょうか。
春は寒暖差から体調も崩しやすく、子どもたちもよく熱が出てお迎えに来てもらうことがあります。不思議なものでお父さんやお母さんが迎えに来て、お家に帰ると熱が下がることがあります。園では時間をあけて、何度も計測して、熱が下がりそうもないと判断してからお迎えを要請するにもかかわらずです。
お仕事を中断してお迎えに来たのに、すぐに熱が下がったと不満に思うこともあるでしょう。でももしその後、熱が下がるどころか上がり続け、入院ということにでもなれば親も子も大変です。
「熱がすぐに下がって良かったね」と前向きに受け止めたらどうでしょう。
その方が断然、心豊かに、楽しく子育てができるのではないでしょうか。
すべての事象を前向きに受け止めることは難しいことですが、前向きに受け止める努力をし続けると、何かが変わるかもしれません。