OECDは「2030年に望まれる社会ビジョン」と、「そのビジョンを実現する主体として求められる生徒像とコンピテンシー(資質・能力)」について、30を超える国の政策立案者・研究者・校長・教師・生徒・民間団体が集まり、対話を重ね、創造・協働してきました。
今もなお、現場レベルにおいて、例えばカリキュラム、養成、研修方法など議論を続けています。
そのプロジェクトにおいて昨今耳にするのが、「エージェンシー」という言葉です。
エージェンシーというと代理店というイメージですが、生徒をエージェント(代理人)に見立てて、「変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力」と定義しています。
難しい内容なので私自身の理解が正しいのか、いささか不安ですが、敢えて私なりの解釈をお話ししたいと思います。
まず、前提に社会が急速にAI化、ICT化していること、そしてしあわせの価値観が多様化していることが挙げられます。
戦後、右肩上がりの経済成長を続けていた時代は、一人ひとりが稼いで裕福になれば結局は国自体が富み、皆がしあわせになるはずでした。
しかし、現代ではライフワークバランスが見直され、必ずしも猛烈に働いて稼いでもしあわせが実感できないことに気づいた人が増えてきました。
価値観の多様化は悪いことではありませんが、一方で身勝手な行動を認めるものではありません。
日本では「アクティブラーニング」を「主体的、対話的で深い学び」と訳しました。問題に直面した時、自ら考え、主体的に行動していく。と同時に周囲の意見を参考にしたり、取り入れたり、同調したり、譲り合ったり、ぶつけあったり、対話することで問題解決に取り組むための学びが不可欠です。
わたしたちは社会の構成員として生きていますから、その社会に参画していることに対し、自らの役割や責任を認識したうえで主体的に行動すること、それがエージェンシーということになります。
では、保育ではどのように取り組んだらよいのでしょうか。
園の創建時からの精神でもある「知・徳・体 調和の取れた保育」がやはりベストだと思います。
一斉保育と 個別の遊び(学び)、得意な活動と苦手な活動への取り組み、デジタルと アナログ、仮想と現実など、すべてがバランスよく取り組む姿勢が、今まで以上に求められているように思います。
急激な時代の変容に取り残されそうですが、新しいものを加えるばかりでは疲弊するだけですので、今あるものに少し手を加えたり、改めたり、時には止めてみたり、急激な変化の時代だからこそ、少しずつ変化していけるようにしたいと思います。
振り返ったら誰もいないでは困りますから。