新潟県私立幼稚園・認定こども園協会では、設置者・園長研修会と県PTA連合会研修会を毎年、同時開催しています。
先日朱鷺メッセで行われた同研修会では、コロナ感染拡大もあって例年の半分以下の参集となりました。オンライン参加の園もありましたが、それでも例年より少なかったようです。
この度は上越教育大学の西川純教授にご講演をいただいたのですが、改めてこれからの教育について身につまされるとともに、保護者の方にも一緒に考えていただきたいと思い、気になった点などをまとめてご紹介します。
大卒の現状
現在、概ね大卒の5割は非正規雇用です。MARCH(明治・青山・立教・中央・法政大)でも約3割から4割が非正規雇用と言われています。卒業と同時に正規雇用される学生はもう少しいますが、3年以内の離職率が約3割のため、前述の数字となります。
これが宿泊業や飲食業であれば離職率は約5割です。
コモディティー化(製品が1年ぐらいでは変わらず、機能や品質に差がない)が進む中で、工業化社会から脱工業化社会へと移行した結果激しい価格競争がおき、そのしわ寄せとして人件費を削減、非正規の拡大が生じたことが大きな要因です。
Job型大学(医師や教員など専門職の養成校など)はまだしも、非Job型大学では何をやりたいのか、何を学びたいのか、しっかりとしたビジョンを持って通わなければその後の就職が難しくなります。
また、日本では現在、終身雇用が終わりを告げようとしています。いや既にほぼ終わっているといってもよいのかもしれません。
終身雇用がなくなるということは、企業による積極的な人材育成は行わないという意味を持ちます。つまり即戦力となる人材、例えば何らかの資格や特別な能力、世代を超えて対応できるコミュニケーション能力などが求められています。
目の前にいる園児の未来
今、目の前にいる園児の約4割は非正規雇用となります。将来すべての子どもが資格や特別な能力を持っているか、あるいはコミュニケーション能力が高いということはありえません。社会に非正規雇用がなくならない限り、誰かが非正規労働者とならなければなりません。
その子どもたちが幸せになるためには、人生において一つの大きなイベントがあります。結婚です。結婚によって世帯収入は増え、支出は単純に2倍にはなりませんから、結果として一人でいるより生活力が上がるということです。
学校で得られるもの
学校は何をするところですか、と質問されれば「学ぶところ」と最初に答えるのではないでしょうか。実際、講演中に質問されて私は「学習するところ」だと思い浮かべていました。
実際に授業があり、国語や算数といった学習をするわけですが、一番大切なことは友人や知人をたくさん作ることです。一緒に学び、遊ぶ。仲間づくりが将来私を支える大切なひとになるのです。
終身雇用のないアメリカの統計では、再就職ができた理由として知人(特に学校で得た知人)の紹介が一番多かったそうです。親や兄弟、家族ではないことがポイントです。
これからの親と教員の姿
以前、これからの教員の姿としてティーチャー(先生)からパートナー(伴走者)が相応しいという話を耳にしました。今回の講演でも子どもとともに学びあう姿勢の大切さをお話しされていました。先生と園児は同年代ではないし、知識も経験もはるかに先生の方が上ですが、子どもたちの伴走者として、少し前に出て導いたり、少し斜め後ろから背中を押してあげたり、一緒になって並走したりというイメージでしょうか。一方的な指示も放任もいけないということです。
そしてそれは、親も同様です。
まとめ
これからの社会は益々多様化していきます。しあわせの価値観も千差万別です。私が学生であった頃は、しっかり勉強して高卒より大卒、少しでも偏差値の高い学校にいけば将来が約束されると信じられていましたが、今はありえません。
子ども自身が何をやりたいのか、何を学びたいのか、偏差値ではなく、やりたいこと、学びたいことを伴走者として子どもに寄り添うことです。
道は一つではありません。この世界は様々な生き方があることを親も教員も調べる必要があります。